聴覚障害とムーブメント教育2008/10/05 18時59分47秒

 ちょっと前の話になりますが、夏休み前の7月10日(木)に、大洲市特別支援学級交流学習会にムーブメントの講師として参加させてもらいました。
 この交流学習会は、大洲市内の小・中学校特別支援学級の児童生徒が合同で年間3回(各学期1回)行なっている行事で、この日は第1回目の交流会として「ムーブメント」を取り入れてくれたのです。
 大洲市内の特別支援学級の児童生徒は、小・中学校合わせて約40名、それに小学校と交流している県立養護学校(分校)の生徒もこの学習会に参加していたので、合計約50名という人数でムーブメントを行ないました。
交流学習会の内容は、以下のとおりです。

①開会行事
②自己紹介
③ムーブメント活動
 ○ホースを使ったムーブメント
 ○タオルを使ったムーブメント
 ○カーラーロープとタオル、スクーターボードを使ったムーブメント
 ○パラシュートを使ったムーブメント
④閉会行事


 ②の各学校ごとに前に出て一人ずつ自己紹介をしている時、聴覚障害の女の子(小1)が一人いるのに気付きました。この女の子(以下A子ちゃん)は、近隣の県立聾学校に在籍しており、週1回大洲市内の小学校に交流に来ているので、この日も交流日として参加していたようです。
 A子ちゃんは知的発達の遅れはなく、手話を使って一緒に来ていた母親や教師とコミュニケーションをとっていました。
 約50人の子ども全員に楽しんでもらうために、そしてこの聴覚障害のA子ちゃんにも「ムーブメントは楽しい」と思ってもらうためにも、私もムーブメント活動の時には、手話を付けて(たまたま学生時代に手話を勉強していたので、本当に久しぶりに手話を使いました)指示を出したり応援したりすることを心がけて取り組むことにしました。
 私のたどたどしい手話付きの説明や指示をじっと見つめて聞いてくれていたA子ちゃん。十分理解してくれたかどうか分からなかったのですが、ムーブメントが始まると交流の子どもたちと一緒にホースを持って走ったり引っ張ったりと、もうムーブメントに夢中でした。タオルムーブメントになった時も、最初に私の顔をよく見て話を聞き、次に隣の仲良しの友達の様子を見ながら同じように取り組み、タオルを使って自由に体を動かす時には、自分の考えた動きで会場を走り回っていました。
 この交流学習会の閉会行事が終わった後の帰り際に、Aちゃんのお母さんが私の方に来てくれ、直接「ありがとうございました。A子はとっても喜んでいました。」とお礼の言葉をいただきました。私の方もお詫びとお礼を言って、「いつかまた一緒にムーブメントをしましょう」という話でお別れしました。

 このムーブメント活動では、私の方が「内容や意味が伝わったかな?」と心配しながら進めていきましたが、実際の活動中は、A子ちゃんは大まかな指示内容は私の手話と口の動きで読み取り、分からない時は周りの子どもたちの動きを見て内容を把握していたようです。でも、50人という集団の力と、「楽しい」「おもしろい」「できた!」という快の感情を友達と一緒に共有できたことが、A子ちゃんの喜びにつながったのだと思います。

 聴覚障害児(者)は、視覚的な情報をもとに状況や内容を判断して生活(活動)しています。したがって、聴覚障害児(者)に対してムーブメント活動を行なう場合、言葉のみの説明や指示よりも、自閉症の子どもに対して行なうような視覚的支援を取り入れること、周りの人がモデルとなるような動きを取り入れることで十分対応できるように思いました。

 今回は、A子ちゃんをとおして、障害のあるなし、種別、男女、年齢に関係なく「全ての人の健康と幸福の達成感」というムーブメント教育の理念の奥深さを感じることができました。

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